クラウドPBXでは、 固定電話番号、特定IP電話番号 (050から始まる番号)、0120、0800などから始まる電話番号を使用することができます。このうち固定電話番号と0120、0800などから始まる通話料着信課金 の電話番号は、一定の条件が整えば 既存の番号をそのまま引き継ぐことができます。この記事では、電話番号をそのままクラウドPBXに引き継ぐ方法や手順について解説しています。また、電話番号を引き継ぐことでどういったメリットがあるのかといった点についても取り上げているため、クラウドPBXの導入を検討している企業の担当者はぜひ参考にしてください。
クラウドPBXで利用できる電話番号
クラウドPBXで使用できる電話番号は大きく分けて以下の3種類です。
- 固定電話番号
- 050から始まる特定IP電話番号
- 0120、0800などからから始まる通話料金着信課金の電話番号
ここではそれぞれの概要について解説します。
固定電話番号
クラウドPBXで使用できる電話番号の1つが「固定電話番号(0ABJ)」です。固定電話番号は、各地域の番号を含んだ10桁の番号のことで、「0AB-CDE-FGHJ」という形で表示されます。最初の0は全国共通の番号であり、ABが市外局番を示します。例えば、東京であれば03、大阪であれば06といった形です。固定電話番号を所有していると、その地域で活動していることを示すことができるため、顧客からの信頼獲得につながるものです。少し前までは、固定電話番号は固定の電話機からしか使えませんでしたが、今ではクラウドPBXなど を活用することでスマートフォンなど他の端末からでも利用できるようになりました。
050から始まる特定IP電話番号
クラウドPBXでは、050から始まる特定IP電話番号も利用可能です。特定IP電話番号とは「050-通信事業者番号-利用者番号」という形で構成される11桁の番号です。固定電話番号とは違って電話番号を利用する地域に関係なく使用できる点が特徴となっています。番号によって地域が限定されないため、全国展開をしている会社というイメージを与えることもできるでしょう。全国どこでも使用できる柔軟性の高さが特徴である一方で、契約サービスや通信事業者を変更すると、電話番号は強制的に変更となるため注意が必要です。
0120や0800などから始まる通話料着信課金の番号
クラウドPBX で使用できる3つ目の電話番号は、0120や0800などから始まるいわゆる通話料着信課金の番号 です。この番号は、既存の固定電話番号に紐づけて利用する電話番号となっています。0120や0800などから始まる通話料着信課金の番号は、引き継ぐというよりも、固定電話番号に連携させるため、連携さえできればそのまま利用可能ですが、電話会社を変更する場合には、新しい会社に引き継ぐ必要があります。、企業がこちらの番号を用意しておくことで顧客は無料で電話をかけられるため、気軽に問い合わせなどができる点が特徴です。また、多くの人が特に0120から始まる番号を認識しているため、信頼性も高いと言えるでしょう。一方で、通話料は受電する企業側が負担することとなるため、通話コストが高くなる可能性がある点には注意しなければなりません。
クラウドPBXで利用できない電話番号
固定電話番号や特定IP電話番号、0120や0800などから始まる通話料着信課金の電話番号が使用できる一方で、クラウドPBXでは110番や119番などの緊急通報は利用できません。これは、 電気通信事業法で転送電話では緊急通報等を規制するよう求められているためです。
また、117(時報)や177(天気予報)といった1から始まる3桁の短縮ダイヤルも使用できないケースが多くなっています。短縮ダイヤルやナビダイヤルなどが使用できない理由は、転送電話事業者に提供されている卸回線がこれらの番号に接続するサービスを提供していないためです。
利用できない電話番号はいくつかありますが、全て同じ理由で使えないのではなく、番号によって異なる理由から利用できないことを覚えておきましょう。
緊急通報が利用できないときはどうすればいいか
110番や119番などの緊急通報はいつかけることになるかわからないものです。クラウドPBXを利用しているときにこれらの番号を利用する必要がある場合は、スマートフォンや携帯電話の音声電話回線を使用してください。クラウドPBXを利用した状態でかける場合は、緊急通報ではなく、警察署や消防署の電話番号へ直接電話をかける必要がありますので、事前に電話番号を登録しておき、いざという時の通報の方法について、社内で運用方法を決めておくことをおすすめします。
クラウドPBXへ引き継げる電話番号
これまで使用していた電話番号をクラウドPBX導入後も引き続き利用したいと考える人もいるかもしれませんが、電話番号によって引き続ける番号と引き継げない番号があるため注意をしてください。
固定電話番号や0120、0800などから始まる通話料着信課金の電話番号は、一定の条件をみたすことで引き継ぎ可能です。そもそも、現在利用している番号を他の事業者へ引き継ぐことを「ナンバーポータビリティ」といいます。そして、固定電話番号(0ABJ)のナンバーポータビリティは、「LNP(Local Number Portability)」といいます。このLNPを行う場合、原則的として利用者の活動の拠点(番号の使用場所)が、移転後も同じ0ABJの地域内でなければなりません。例えば、市外局番が03の東京から06の大阪へと移転してしまうと固定電話番号の引き継ぎは不可能です。どこにでも持っていけるわけではないということを覚えておきましょう。
また、電話会社を移転するにあたって、移転元の電話会社がLNPで移転可能な番号であるかという点も条件にあたります。固定番号だからといって必ず移転できるわけでなく、同じ地域内での移転でも、移転できない可能性があります。
0120、0800などから始まる通話料着信課金の電話番号に関しては、一定の条件がそろえば引き継げる可能性があります。一方で、050から始まる特定IP電話番号は、番号ポータビリティのサポートがどの電話会社でもサポートされていませんので、 引き継ぎできません。
既存の番号を引き継ぐメリット
クラウドPBX導入後も既存の電話番号を引き継ぐことができれば、企業はさまざまなメリットを享受できます。ここでは具体的にどのようなメリットがあるのか解説します。クラウドPBXの導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
番号変更を顧客に通知する必要がない
クラウドPBX導入後も同じ電話番号を使えれば、番号変更を顧客に通知する必要がありません。新しい番号を取得する、番号を変更するとなると、すべての顧客や取引先に番号を周知しなければなりません。周知作業をするだけで手間と時間がかかるほか、周知のタイミングが遅れると、顧客とのやり取りがうまくできず、業務に支障が出る恐れもあります。一方で、既存の番号をそのまま利用できれば、そういった手間は発生しないため、クラウドPBX導入後もすぐにそれまでと同じように業務に取り組むことができます。
パンフレットなどを修正する必要がない
電話番号が変更になると、顧客への周知だけでなくパンフレットなどの各種資料等に記載している電話番号も修正しなければなりません。具体的には、会社案内のパンフレット、会社ホームページ、名刺、納品書・請求書などです。ホームページのみの修正であればそれほど時間はかからないと考えられますが、パンフレットや名刺のような印刷物の修正には時間がかかります。また、それまでテンプレートとして利用していた納品書や請求書の電話番号の修正が遅れると、間違った情報の文書を取引先に送付することとなるため注意しなければなりません。既存の電話番号を引き続き利用できれば、当然こういった手間は発生しません。
電話番号で登録している各種サービスをそのまま利用できる
電話番号を各種サービスに登録している場合、既存の番号を引き継ぐことができれば登録サービスもそのまま利用可能です。一方で、番号を変更すると、各登録先で電話番号の変更手続きを行わなければなりません。役所や商工会議所、銀行、リース会社など、企業にもよりますが、会社の電話番号で登録しているサービスは多岐に渡ると考えられるため、どのサービスに登録しているのかすべてを洗い出したうえで手続きをする必要があります。このような手間を考えると、特別な理由がない限りは既存の電話番号を引き継いだほうがいいでしょう。
クラウドPBXで電話番号をそのまま使うには?
ここではクラウドPBXで既存の電話番号をそのまま使う方法について解説します。固定電話番号と0120や0800などから始まる通話料着信課金の番号について、それぞれの方法を取り上げているため、ぜひ参考にしてください。
固定電話番号をそのまま使う方法
クラウドPBXで固定電話番号をそのまま使いたい場合、大きく分けて以下の2つの方法があります。
- VoIPゲートウェイを使用する
- 番号ポータビリティを使用する
ここではそれぞれの方法について解説します。
VoIPゲートウェイを使用する方法
VoIPゲートウェイとは、電話会社が提供する電話回線をクラウドPBXを含むIP-PBXに収容するために通信回線をIP化するための変換装置です。VoIPゲートウェイを使用した方法では、オフィス内の既存の電話回線をVoIPゲートウェイを介してクラウド上のPBXへ収容することで電話番号を引き継ぎます。この方法であれば、電話番号を契約している事業者を変更せずに、クラウドPBXへの移行が可能です。ただし、VoIPゲートウェイ機器の設置に伴うコストが発生するため、事前に予算を確認したうえで設置できるかどうかをチェックしておきましょう。
番号ポータビリティを使用する方法
番号ポータビリティは、事業者を乗り換えた後も、それまで利用していた電話番号を利用できるようにする仕組みのことです。携帯電話においても、事業者変更に伴う電話番号の引き継ぎを行う際にこの番号ポータビリティが用いられています。番号ポータビリティを使用すれば、新たにクラウドPBXを契約する場合でも既存の電話番号をそのまま引き継ぐことができます。なお、番号ポータビリティを利用する場合は、移行先の通信事業者に申し込みを行なってください。現行の事業者への申請ではありません。
0120や0800などから始まる通話料着信課金の番号をそのまま使う方法
0120や0800などから始まる電話番号は、固定電話に紐付けされる形となっているため、固定電話の引き継ぎができればこちらの番号も引き継ぐことができます。ただし必ず引き継げるものではなく、事業者によって引き継ぎできるかどうかは異なるため確認することをおすすめします。
電話番号そのままでクラウドPBXへ移行する流れ
ここでは、電話番号をクラウドPBXへ引き継ぐ際の具体的な流れについて解説します。引き継ぎたいものの何からすればいいのかわからないといった方はぜひ参考にしてください。
VoIPゲートウェイを使用する場合
VoIPゲートウェイを使用する場合、オフィス内に引かれている電話回線をVoIPゲートウェイを介してクラウド上のPBXへ収容します。なお固定電話番号を引き継ぐ場合、完全クラウド型のクラウドPBXではなく、機器設置型のクラウドPBXを選択する必要があるため注意してください。また、VoIPゲートウェイ製品によっては、接続できる回線数が限られているケースもあります。大企業など、回線数が多い場合、コストが嵩む可能性があるでしょう。 VoIPゲートウェイは、クラウドPBX事業者が収容確認を行った装置でないとつなげないケースが多いため、事前に事業者に相談することをおすすめします。
番号ポータビリティを使用する場合
番号ポータビリティを使用する際の手順は以下の通りです。
- 移行先の通信事業者に申し込みを行う
- 番号ポータビリティの可否が通知される(申し込みから1週間~)
- 番号ポータビリティができる場合は事業者と実施日時を相談して決める
- 通信事業者の切り替え工事を行う(可否の通知から6~10営業日程度)
上記の通り、番号ポータビリティの申込から切り替え工事の実施まで数週間かかる場合もあるため、時間には余裕を持っておくことが大切です。また、事業者によって切り替えまでにかかる日数は異なるため、利用を検討している事業者がある場合は、日数の目安を確認しておきましょう。
まとめ
今回は、既存の電話番号をそのままクラウドPBXへ移行する方法について解説しました。 クラウドPBXは、固定電話番号、特定IP電話番号、0120や0800などから始まる電話番号が使用できますが、従来の電話番号をそのまま引き継げるのは固定電話番号と0120や0800などから始まる電話番号のみです。また、引き継ぎ方法は大きく分けてVoIPゲートウェイを使用する方法と番号ポータビリティを使用する方法があります。クラウドPBXの導入を検討しているものの、現在使用している電話番号は変更したくない、といった企業の担当者は、ぜひ今回の内容を参考にしてください。