クラウドPBXとは、外線と内線の接続や内線同士の接続をする機能をクラウド上で提供するものです。この記事では、クラウドPBXの導入を検討している方に向けて、具体的な導入の流れや導入にあたって確認しておきたいチェックポイントなどについて解説しています。
クラウドPBXとは
クラウドPBXとは、外線と内線の接続や内線同士の接続をする電話交換機の機能を、インターネットを利用してクラウド上で提供するものです。クラウドPBXは、ほとんどのサービスでクラウドPBX事業者が電話回線の提供しているため、電話回線をオフィスに引く必要がありません。また、基本的なPBXの機能に加えて、スマートフォンを端末として利用できるため、会社にかかってきた電話を外出中の担当者のスマートフォンに、内線で繋げることもできます。従来は、外出中に電話がかかってくると、担当者の帰社を待って折り返し電話する、もしくは担当者のスマートフォンに電話をかけて、電話があった旨を伝えたうえでスマートフォンから電話をするケースが一般的でしたが、クラウドPBXがあれば、そういった手間が省けます。
クラウドPBX導入前に確認しておきたいチェックポイント
ここではクラウドPBXの導入にあたって確認しておくべきポイントを紹介します。クラウドPBXに興味があるものの、どのような基準で選べばいいのかわからない方はぜひ参考にしてください。
既存の電話番号を継続して利用できるか
クラウドPBXを導入する場合、現在使用している電話番号を導入後も継続して利用できるかどうかを確認しておきましょう。日本の電話番号形式の1つである「0ABJ」や「050」「0120」など電話番号の種類によってはクラウドPBXで利用できないケースがあり ます。また、NTTなのか、クラウドPBX事業者なのか、といったどこの電話回線事業者の番号かによっても継続利用の可否が異なります。
市外局番の利用可否
クラウドPBXで希望する市外局番を利用できるかチェックしておきましょう。サービスによって希望の市外局番が使用できないケースもあるため注意が必要です。特に企業の場合、市外局番を利用していないと新規顧客から怪しまれる可能性があります。また、サービスによってカバーしている市外局番が異なるため、こちらもチェックをしておきましょう。
通話品質
クラウドPBXはインターネット環境下で通話をするサービスであるため、通信環境が悪いと通話品質に悪影響が及びます。インターネット通信が集中するタイミングに品質がダウンすることもあり得ますので、自社の通信環境をあらかじめ確認するようにしましょう。また、クラウドPBXは、電話やPBX装置、電話機に関する知識と経験が不足した企業も新規に参入しています。このような事業者のサービスの場合、通話品質が悪い場合のトラブルシューティングが十分できなかったりすることもありますので、注意が必要です。導入後に通話品質の悪さに気づくといった事態にならないためにも、無料トライアルや口コミサイトなどをチェックして、自社の環境で満足できる通話品質を保てるか事前に確認しておきましょう。
クラウドPBXの機能
クラウドPBXは、外線と内線の接続や内線同士の接続をするだけでなく、さまざまな機能を搭載しています。具体的には、自動音声応答や通話録音、CTI機能(コールセンター業務効率化機能)によるCRM(顧客関係管理)ツールとの連携、AIによる通話解析などです。
さまざまな便利な機能がありますが、全てが自社に必要とは限りません。自社の業務を踏まえたうえで、何が必要なのか精査することが大切です。サービス事業者のホームページを確認すると、どういった機能が利用できるのか確認できるほか、無料トライアルを行っているサービスもあるため、事前に確認しておきましょう。
料金がどのくらいかかるか
クラウドPBX にかかる料金はサービスによって異なるため、事前に自社の予算を踏まえたうえで導入コストやランニングコストを確認しておきましょう。クラウドPBXにかかる主な費用は初期費用、月額料金、通話料、電話機代です。特に忘れられがちなのが、電話機代です。クラウドPBXであっても電話機は購入しなければならない場合も多く、その場合は購入費用も発生します。さらに、利用したいオプションによっては追加で料金が発生したり、インターネット環境が整ってない場合はWi-Fiの整備やLAN工事など費用がかかるケースもあります。
クラウドPBX=装置の設置等が不要でコストを抑えられるというイメージを持っている人もいるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。そのため、導入から運用開始後までにどのくらいの費用がかかるのか、事業者に見積もりを作成してもらうなどしてチェックしておく必要があります。この時、複数の事業者から相見積もりを取れれば、費用面での比較がしやすくなるためおすすめです。
セキュリティ対策は安心できるか
クラウドPBXは、インターネットを経由したサービスであるため、サービス事業者のセキュリティ対策やセキュリティポリシーをチェックしたうえで、納得できるサービス・安心できるサービスを選びましょう。セキュリティ対策が十分でないと、万が一サイバー攻撃などを受けた場合などに情報流出の恐れがあるためです。費用が安いという理由でサービスを決めてしまうと、実はセキュリティ対策がそれほどしっかり行われていなかったという事態にもなりかねません。そういった事態を回避するためにも、暗号化やウィルスチェックが安心できるものなのか事前に確認しておきましょう。また、それと同時に自社のセキュリティ対策についてももう一度確認してみてください。
サポート体制は充実しているか
サポート体制の有無もクラウドPBXのサービス選びにおいて重要なポイントの1つです。特に初めてクラウドPBXを導入する企業の場合、不明点などがたくさん出てくる可能性があります。また、社員が使い方に慣れるまでに時間がかかるケースやトラブルが発生するケースもあるでしょう。そのような時に、サポート体制が充実しているサービスだと、気になることや分からないことを気軽に確認でき、すぐに解決できる可能性が高まります。専門知識を持ったスタッフが迅速に対応してくれるだけで導入する企業にとっては安心感があります。電話が使用できないと、日常業務にも大きな支障をきたす可能性があるため、スムーズに導入するためにもサポート体制についてもチェックしておきましょう。
設定変更のしやすさ
クラウドPBXの設定変更のしやすさも導入前に確認しておくべきポイントです。組織変更や席替えが多い企業は特に注意するようにしましょう。また、企業によっては、閑散期と繁忙期があり、電話の利用頻度や利用人数に大きな違いが見られるケースもあるため設定変更を柔軟に行えれば、閑散期にも関わらず繁忙期と同じ内容で契約する必要ながなくなり、無駄なコストの発生を防げます。年間を通して、電話の利用頻度や利用者数に変化がない企業にとってはそれほど問題にならないかもしれませんが、変化が大きい企業は事前にチェックしておきましょう。
導入目的が明確か
クラウドPBXの導入にあたっては、何を目的としているのか、明確にしておく必要があります。これは、目的が曖昧で、なんとなく便利そうだからといった理由で導入すると、導入による効果を十分に得られず、かえってコストだけが無駄にかかってしまう恐れがあるためです。また、目的が明確になれば、選択するべきクラウドPBXサービスもある程度絞ることができます。例えば、コールセンター業務でクラウドPBXを導入する場合は、インバウンド型か、アウンバウンド型か確認する必要がある他、設定変更を柔軟に行えるかなどといった点がポイントとなります。また、電話業務の効率化を目的としている場合は、自動音声応答やCRM連携など多機能のサービスの方が向いているでしょう。
クラウドPBX導入のための下準備
クラウドPBXの導入にあたって行う主な下準備としては、以下のようなものが挙げられます。
- インターネット回線やWi-Fi環境の準備・電話機やスマートフォンなどの端末の用意
- 既存の電話回線を使う場合は、VoIPゲートウェイを準備
- 必要なIDやチャネル、端末数を確認する
- 利用するサービス独自で準備が必要なものがないか確認する
- 複数の電話番号がある場合は、どの番号をクラウドPBXに収容するか決定する
クラウドPBX=クラウド上のサービスだから、契約を結べばすぐに利用できると思っている人もいるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。例えば、そもそも企業に固定電話機がない場合は購入が必要となる可能性がある他、クラウドPBXであっても電話機を購入しなければならない場合も多くあります。また、インターネット環境が整備されていない場合はLAN設置工事やWi-Fi環境の準備が必要となるでしょう。社員が使用するスマートフォンを会社が支給する場合、別途用意しなければならないケースもあります。すでにここで挙げた環境が整っている場合は比較的スムーズに利用を開始できますが、全てを一から揃える必要がある場合、ある程度時間がかかる可能性が高いです。
また、どのようなプランで契約するかも検討しなければなりません。同じサービス事業者でも、提供しているプランが複数あるケースも見られます。自社の電話の利用状況や予算によって適切なプランが異なるため、安いから、多機能だからといった理由だけで選ぶのではなく、自社のニーズを把握したうえで選ぶ必要があるでしょう。
これで完璧!クラウドPBXの導入方法&流れ
ここでは実際にクラウドPBXを導入する際の流れについて解説しています。これから導入しようとしているものの、どのような手順で導入するのかいまいちわからないといった方はぜひ参考にしてください。
契約するサービスの選定
導入にあたっては、まず契約するクラウドPBXサービスを選定しなければなりません。オンラインなどでサービス事業者を探し、気になるサービスがあれば問い合わせて詳細を確認してみてください。また、見積もりをもらうことで具体的なコストが明確になります。先ほども説明しているように、選定にあたっては、機能や料金に加え、サポート体制の有無やセキュリティ対策などもチェックしておきましょう。
申込をする
いくつかのサービスの見積もりやプラン内容を比較したうえで、1社を決めたらサービスへの申し込みを行います。無料トライアルを提供しており、それを利用したい場合はその旨を伝えてください。
端末の準備
契約を結んだら、必要に応じて端末の準備を行なってください。具体的には、固定電話やスマートフォン、パソコンなどです。すでに端末が揃っている場合は不要です。また、インターネット環境が整備されていない場合はLAN設置工事やWi-Fi環境整備の必要があるため早めに動くようにしましょう。さらに、既存の電話回線を使用する場合は、VoIPゲートウェイなどの機器の設置も必要とます。
利用開始
端末の準備ができたら、機器を設置し、使用端末で専用アプリをインストールしてください。これで環境が整い利用開始となります。クラウドPBXはすぐに利用できると考えている人もいるかもしれませんが、端末の準備等に時間がかかるケースは珍しくないため、導入にあたっては、時間に余裕を持っておくようにしましょう。
まとめ
今回は、クラウドPBXを導入する際の流れや導入にあたってのチェックポイントなどについて解説しました。クラウドPBXを導入することで、外線と内線の接続や内線同士の接続ができるため、電話を利用した業務をよりスムーズに行えるようになります。一方で「今時はクラウドが良いだろう」といった安易な理由や、コスト削減や業務効率化のセールス・トークを真に受けて、よく分からないクラウドPBXを導入してしまって失敗するケースは少なくありません。このような事態を回避するためにも、今回紹介したポイントをしっかり押さえて準備を進めていくことが重要です。
以下の記事ではクラウドPBXの導入にあたってありがちな失敗ポイントについて取り上げているため、導入を検討している方はぜひこちらもご覧ください。
https://www.maho-pbx.jp/ndmedia/failure-case/